わたし、公僕でがんばってました。(古林海月著、中経出版)

属性情報  [著者]都道府県職員、公務員退職

      [仕事]都道府県、ケースワーカー、文化振興、大学職員

      [おススメ]地方公務員志望

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古林さんは、元都道府県職員の漫画家さんです。

関西で震災があったH県、とのことなので、ぶっちゃけ兵庫県かと思いますが、県職員時代の経験をだいたいそのまま書いてくださっているルポ漫画です。

在職期間は1993年から2002年とのことですから、今となっては「古き良き公務員」の時代を知ることができる書籍かもしれません。もう15年もたってますから、兵庫県職員の今の姿は、きっとこの本とは多かれ少なかれ違うんだろうと思います。

ただ、この本、ただ単に「古き良き公務員」のことが描かれている、化石みたいな本かというと、そうではありません。


まず、古林さんが入庁して間もなく、阪神・淡路大震災が発生しており、この本には震災時のことについても書かれています。

このような大震災に限らず、地方公務員と災害との関係は、かなり濃密です。

例えば台風。私も区役所にいた頃は、「突然ですが、台風の非常配備で今日は帰れません」というような事態がしばしばありました。正直、ちょっとした台風くらいでは、本当に深刻な事態というのは発生しませんが、もし阪神・淡路大震災や東日本大震災のような災害が起これば、我々地方公務員は自分の家族や生活を差し置いて、災害対応をしなければなりません。

古林さんの本には「普段は身ぎれいにしている同僚が無精ひげを生やしていて、訪ねてみたら、『暴れている被災者に声をかけたら、お前みたいにヒゲ剃ってる余裕もないんじゃ!と逆切れされたから』と答えが返ってきた」というエピソードが書かれていましたが、こういう状況は容易に想像がつきます。

市民から心無い言葉を投げかけられるというくらいの話なら平常運転の範囲内ですが、公務員を目指される方は、大災害が発生したときに自分のことや家族のことを最優先に考えられない仕事に就くんだということは、十分に覚悟をしていただく必要があると思います。


次に、古林さんは、「文化芸術課」に2年、「大学事務」に4年、「福祉事務所」に3年在籍されて退職されていますが、退職の理由は生活保護のケースワーカーの仕事に適応できず、心身の健康を崩してしまったからというものでした。この本には、ケースワーカーの仕事の困難さが描かれています。具体的には、精神疾患を抱えたケースさんから執拗な苦情の電話に耐えられず体調を崩し、退職後も数年間は電話に出られなかったというエピソードがあります。

私が公務員受験をした時を思い出しますと、「ケースワーカーという壮絶につらい仕事があって、そこに配属されたら終わりだ」という噂のようなものがありました。ただ、こういう話はなかば都市伝説化しているようなところがあって、別にケースワーカーが平気な人も多いですし、ケースワーカーが役所の中で最悪の仕事かというと、別にそういうこともないと思います。ちなみに僕の隣の席の後輩くんは、農地法の許認可事務を担当してもらっていますが、生活保護の仕事に戻りたいとよく愚痴をこぼしています。


この本は、描かれた時代がちょっと古いという弱点はありますが、「とりあえず都道府県職員ってどんな雰囲気なの」かを知ることができる点で、良い本だと思います。兵庫県職員志望の方はもちろん、都道府県職員を志望される方や、ケースワーカーの仕事について良くも悪くも興味がある方は、読んでみて損はありません。漫画としては、ゆるーいエッセイ漫画です。


ところで、愛知県職員の方から「新入社員は出先3年→本庁3年、又は、本庁3年→出先3年ってキャリアパスなんですよ」って教えてもらったことがあるんですが、古林さんの本でも、ほとんど同じことが書いてありました。都道府県職員のスタンダードなんですかね。我が名古屋市ではそういう慣習はないので、やっぱり都道府県と市町村はカルチャーがちがうのかなあと思ったりしました。まだまだ知らないことがたくさんあります!

公務員キャリアトーカーズ

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